展覧会のご案内

服部峻昇展
─漆芸の燦(きらめき)─

会期
2012年4月7日(土) 〜 2012年4月16日(月)

10:30~19:00(最終日は17:00まで)

セイコーハウス6階
セイコーハウスホール

「麗(うるわ)し」「潤(うるお)す」が語源とされる漆を用いる漆芸は、Japan(ジャパン)の名の通り、日本の美意識を象徴する工芸といわれている。深遠な漆黒と荘厳な金が対を成す蒔絵の構図、精緻な加飾、豊潤な艶と光沢を湛えた美しさ。加えて防虫・防腐、魔除けの効果があることも貴人たちに愛された所以だろう。
京漆芸を牽引する服部峻昇氏は、本年自身の漆芸50年の節目を迎える。伝統的な技法に留まらず、貝や玉虫の翅の輝きを生かして、現代の生活空間を彩る独創的な作品を発表し続けている。和光の時計塔竣工80年を記念して制作された玉虫茶器は、アラベスク文様の装飾をモチーフに、玉虫の翠色と金蒔絵の大胆な意匠が、高貴な輝きと佇まいを醸す。服部氏が扱う材料は、国産の漆をはじめ、タイ産の玉虫、ニュージーランドやメキシコ産耀(よう)貝など稀少な天然素材ばかり。特に海外から調達する厳選された貝と玉虫は、色目や形を揃えて加工する労を要するが、自然のみが創り得る虹光は鮮烈な存在感を有し、思わず目を奪われるほどだ。
服部氏が最も大切にしているのは"美意識と形、装飾の融合"である。草花文様と幾何学文様、直線と曲線といった意匠の自在な組み合わせ、さらに漆を塗り重ねて盛上げる「高蒔絵」、錫など金属の型を貼る「平脱(へいだつ)」、「螺鈿」、「象嵌」など多種多様な技を駆使して造形と一体化させることで、絢爛たる万華鏡のような"美"を創出する。4年ぶり5回目となる本個展では、飾箱、茶器、額装品など70余点が出品される。「不安定な時代ですから、日々、地に足の着いた作品づくりを心掛けています。会場で鑑賞し、また実際に使っていただくことで、心を和やかにしていただけたら有難く思います」。人の心を慰め、勇気づけることもまた揺るぎない美術工芸の役割である。

服部峻昇(はっとり・しゅんしょう)

1943年
京都に生まれる
1963年
日展初入選
以後特選2回受賞、審査員5回歴任
1975年
文化庁芸術家在外研修員として1年間欧米に留学
1991年
日工会展創立、同審査員、以後歴任
1992年
倫雅美術奨励賞受賞
1995年
ローマ法王ヨハネ・パウロ二世に謁見し漆の典書台を献上
日工会展 文部大臣賞受賞
1995年
95年より和光にて個展(2001・05・08年)。
1997年
京都府文化賞功労賞受賞
1998年
紺綬褒章受章
1999年
京都美術文化賞受賞
2004年
京都迎賓館主賓室 飾棚「波の燦」および調度品制作
2005年
日展 内閣総理大臣賞受賞
2006年
京都市文化功労者表彰
現在
日展評議員、日工会常務理事、京都府工芸美術作家協会理事、創工会会員