展覧会のご案内
薪で焼いた 白と黒のシャープネス
- 会期
- 2024年2月8日(木) 〜 2024年2月18日(日)
11:00 - 19:00 最終日は17:00まで
セイコーハウス6階
セイコーハウスホール
このたび和光では、「薪で焼いた 白と黒のシャープネス」 と題して独自の白の表現を追い求める谷 穹さんと田淵太郎さん、黒陶にこだわって黒の世界に魅了された篠原 敬さんと髙山 大さんの四人展を開催します。四人の共通点は、薪窯で作品を焼成し自身のやきものに深く対峙しているその姿勢です。そんな彼らが作り出すやきものは、 プリミティブかつ現代的な造形も魅力的です。静かに語りかけるかのような四者四様の白と黒の表現世界をぜひご高覧ください。
このたびの能登半島地震で被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
今回の地震の被害を免れた篠原 敬さんの珠洲焼の作品が出品されます。
また今展の売上の一部を義援金として珠洲焼創炎会様に寄与し、珠洲焼の作家の方々にお届けいたします。
追記:3月4日(月)付で売上の一部を珠洲焼創炎会様に寄付させていただきました。
白と黒の対話 - 展覧会によせて -
薪窯から生まれたやきものの真の魅力は、 表面に顕れる焼きのダイナミズム以上に、内側から滲む静けさにある。その焼成過程における炎の揺らぎがもたらす微妙な表情は、色彩が溢れ返るにぎやかな現代においては、寡黙なふるえにしか見えないかもしれない。しかしじっくりと向き合ってみると、不均質な温度変化の痕跡は見逃すことのできない不均衡さとなり、 底から湧き出るような美しさを鋭く瑞々しく語りかけてくる。
居場所も背景も異なる四人に共通する振る舞いがあるとすれば、それは各々の古陶に対する想念に見出されるだろう。それも、人類の主流が元来の有り様を忘れかけているようなやきものの断想に、心の耳を傾ける態度である。
厳密にいえば、白と黒は色というよりも気配であり、そこで体現される姿は始原であり極限である。けれども、ここにあるやきものが醸し出す白と黒はもう少し柔らかくニュアンスがあり、無数の色彩と多様な質感を内包する。カラーよりもモノクロームの写真のほうがありありと情景を喚起することがあるように、観る者の想像力の解像度を上げて皮膚に生きることのリアリティを感じさせる。 日常の延長にあり、生活を彩る器とは、本来、そういうものではないかと思う。
令和6年能登半島地震で被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
このたび和光で企画された「薪で焼いた 白と黒のシャープネス」展に携わる機会をいただき、出品作家の先生方が拠点とされている三重、信楽、香川、そして珠洲を訪問しました。各々の工房と窯を見学する中で、やきものの仕事が常に、豊かな自然に触れる歓びと脅威と隣り合わせに育まれてきたことを改めて感じました。そうして厳しい環境から生まれるやきものだからこそ、今なお、私たちの手に生きていく力を与えてくれる存在でもあるのだと思います。ひとりでも多くのかたに、やきものの持つ本当のあたたかさを感じとっていただければ幸いです。
文化に関わる営みは、作り上げることも受け継いでいくことも、とても時間がかかることです。本展覧会が、長い目で見たときに、人々が生き続けていくための、小さくも大切な灯になることを願っています。
川北裕子 (パナソニック汐留美術館学芸員)
■ギャラリートーク
2月10日(土)司会進行 森由美さん(陶磁研究家)
2月11日(日)司会進行 川北裕子さん(パナソニック汐留美術館学芸員) 両日ともに14:00~(予約制)
1月29日(月)よりお電話にて予約を承ります。
お問い合わせ:美術部(03)3562-2111(代表)
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谷 穹
「信楽 蹲」φ2l×h19.1cm
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田淵太郎
「窯変白磁面取花入」w18×d18×h51cm
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篠原 敬
「六角蓋物」φ15×19cm
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髙山 大
「黒陶四方壺」w20.3×d13.4×h25.5cm